38「トラック野郎にモノ申す」
職場で仲間が増えていったとはいえ、自分に対していい思いを持っていない人も当然いた。
その人は、仕事の態度はイマイチで、偉そうなことをいう割には自分の仕事の精度も低かった。みんな
汗をかいて一生懸命やっているときでも、
おれやんねえよ
といっていなくなることもあった。このままはまずいが、あんまり揉めたくもないと思っていた。ただその時はいきなりきた。
何かのきっかけで、つい言ってしまった。
そうはいうけどさあ、あんた全然自分はできてないじゃん。あれはやんないこれもやんない。
みんな一生懸命やってんだよ。自分だけやんないつもりかよ。
かなり頭にきたらしく、ぼくに向かって歩いてきて、殴るそぶりをして一言二言いって向こうへ行ってしまった。
ぼくはあんまり自分から人にモノ申すようなことをしないので、うっすら汗をかいてヒザもすこし笑っているような感覚を覚えたが、まあ、言ってよかった。と思っていた。
周りにいた人はもっと驚いたらしい。まさかぼくがあのこわもて風の人に意見すると思ってなかったそうだ。リーダーあのときよく言ったよねえ、いや格好よかったわー、と後々まで飲み会のネタになった。