会社や仕事のあれこれを考えるブログ

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人生で大事なことは製造現場が教えてくれた

13「部下に胸倉をつかまれる」

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ぼくらの塗装職場は、正しくは静電塗装という。
鉄のハンガーにぶら下げた製品に、液体の塗料を噴射するのだが、噴射する側と受ける側にそれぞれプラスとマイナスの電気が流れていて、塗料が製品に引き寄せられるようになっている。静電気で下敷きに髪の毛がくっつく原理と同じだ。
ただ、その電圧は静電気レベルではない。人が死ぬレベルだ。
そういう職場で日々作業をしていた。

 

当然、噴射した塗料が全部製品にくっついてくれるわけではないので、そこらじゅうの壁や機械も塗料で真っ黒になっている。その日は、メンテナンスの日で、そういう塗料をはがしたり、清掃をしたりしていた。

 

暗い中の作業なので、ぼくはライトでみんなの手元を照らす役割をしていた。
別にリーダーになったから、楽な役割を選んだわけではない。みんなの作業を監督するつもりでライトをもってきたつもりもない。役割はその日によって、入れ替わればいいと思っていたし、実際に違う日の清掃のときは自分が汚れ役になったりもしていた。

ところが、段の上に登って作業していた青坂がいきなり降りてきたかと思うと、
てめえよう、シロセン巻いたからって調子乗ってんじゃねえよ。おれたちはおめえなんか認めてねえからな。あとから入ってきて仕事もできねえくせに偉そうな顔すんじゃねえぞ。
と言って、胸倉をつかんできた。
会社で、しかも10歳以上も離れた後輩に、突然怒鳴られて胸倉をつかまれるということは全く想定してなかったので、びっくりした。

しかも、彼は、自分が総務だった時に入社の担当をした子だ。2年前の入社式の初々しい顔をまだ思い出せる。

そうか、やっぱり歓迎してくれてるわけじゃないんだ、ここで弱いところを見せたらこの先リーダーとしてやっていけなくなる、でも“おれたち”ってだれだ?複数だったな、ライト照らしてただけなのに何がそんなに気に入らなかったんだろう、こういう場合はどう対処したらいいんだ?、小手返しとかできないしな、とか、を一瞬の間に考えたが、何も良い案は浮かばず、結局
調子になんかのってないし。
だけ言った。

青坂はしばらく睨んでいたが、手を離し、そのまま作業場を離れていった。

そのあとは、なんかやっぱりリーダーって大変だなあ、しかし、どうやってこのあとどうしたらいいだろう、とずっと考えていた。
すると夕方になって向こうからやってきて、
さっきはすいませんでした、なんかイライラしちゃって、とばつが悪そうに謝ってきてくれた。


うん、いいよ、いいよ
と答えながら、現場ってこういう人間関係なのかと、新しい世界に踏み入れた気がした。