会社や仕事のあれこれを考えるブログ

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人生で大事なことは製造現場が教えてくれた

10「塗装職場で働く」

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ぼくは塗装職場に配属された。

製品に塗装をする目的は主に二つある。鉄や鋳物でできた製品が錆びないようにするため、もう一つは美粧だ。

イラストはわかりやすくするために刷毛をもって壁面を塗装する作業者になっているが、実際の自動車部品の塗装はこういうものではなく、とてつもなく大きい機械で塗る。

こんな感じだ。

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塗装の職場はいくつかの工程に分かれる。製品をハンガーにぶら下げるカケ、ハンガーにぶら下げられた製品がきちんと塗れるように機械を制御する監視、塗り終わったものをハンガーから降ろすオロシ、塗り終わったものやこれから塗るものを運ぶ運搬、などだ。
こういった工程をOJTで少しづつ覚えていく。

初めはカケをやった。いかにも現場のベテラン職人という加納さんは何を言っているのかちっともわからない。かと思えば、大卒のくせによ!といきなり怒られる。作業を覚えるのに学歴は関係ないはずなのだが、そんなことを言っても仕方がない。見よう見まねでやるしかなかった。

 

だが、現場の仕事は意外と楽しかった。
体はもちろんつらかった。足はまだ毎日パンパンだったし、夜8時に寝ないともたなかった。けれども、その日の分を塗れば終わりなので、仕事を翌日に持越すことがない。そのため、家に帰ってから、あーあれやってなかった、とか、あの仕事大丈夫かな、などの心配が一切なく、気持ち的にはすごく楽だった。

 

また、現場の人たちは、見かけは怖いし愛想は悪いし、大声で怒鳴るし、などとっつきにくいのだが、反面、裏表がなく、とても親切にしてくれた。本音を隠し、裏で何を考えているかわからない人事や総務の事務職の人たちに比べ、とても付き合いやすく、これにも助けられた。
残業をしなくてはいけないのに、何も言わずに帰ってしまう人なんかもいて、気楽というか自由というか、総務にいたころの職場の雰囲気とは真逆の空気が流れていた。
おかげで、数か月もたたないうちに体調も気持ちも元気になっていくのがわかった。

 

ある時、経理の課長が転勤になった。
この人は総務の隣の職場で働いていて、社宅も同じだったので、ぼくのことを気にかけてくれていた。
事務職の人はもうだれも、ぼくなんかには声をかけてこなくなっていたのだけれど、この人は現場までわざわざ会いに来てくれた。
現場におりたって聞いたから心配だったけど、今のほうが元気そうじゃん。安心したよ。
人間、向き不向きがあるからさ。意外と向いてんのかもしんないな。
おれだってさ、今の仕事どうしようかなって考えちゃうときあるよ。がんばれよな。

若くして課長に昇進して活躍している人から声をかけてもらったこと、聞いてはいけない本音を聞いてしまった気がしたこと、他人の目から見ても自分が回復しているということ、いろんなことがすこし嬉しかった。

課長も、頑張ってください。いろいろありがとうございました。 そういって別れた。