今月のご相談
「忙しすぎて先月の残業時間が100時間を超えてしまいました。
残業代は稼げましたが体のほうがきついです。会社からは何も言われませんが
これでいいのでしょうか?」
お答え
過労死のリスクが高まっています。すぐに会社と相談し、医師と相談するなどの対応が
求められます。
職場の上司の方、総務人事の方であればすぐに対応を考えましょう。
ポイント
長時間労働のリスク
医学的には、長時間労働を続けると、脳や心臓の疾患のリスクが高まると言われています。脳や心臓の疾患というのは脳梗塞や心筋梗塞などのような病気を指します。
ではなぜ長時間労働を続けるとそのような病気にかかりやすくなるのでしょうか。
いろいろな研究があるようですが、一つには、睡眠時間との関係が言われています。
つまり、睡眠時間が6時間より短くなると脳心臓疾患にかかるリスクが大幅に上がる、というものです。
また、脳心臓疾患のリスクだけでなく、うつ病のリスクも考えられます。
すなわち、活動している時間が長ければ長いほど交感神経が働いている時間帯が長くなるために、リラックスしている時間帯が短くなり、自律神経の乱れを引き起こすため、うつ病が発生しやすい状態になってしまう、といわれています。
何時間までなら大丈夫?
体力差もありますので、一言で何時間なら、ということは難しいと思いますが、先ほどの睡眠時間と脳心臓疾患との関係の研究では一日あたり睡眠時間が少なくとも6時間必要ということでした。
仕事以外の生活に必要な時間(通勤や食事、排せつなど)の平均時間が5時間と言われているようですので、会社での拘束時間が9時間であれば、残業時間が4時間であればぎりぎり睡眠6時間を確保できるはずということになりそうです。
しかし、残業が5時間6時間・・と増えていけば食事やその他の時間に加え、睡眠時間も無くなっていくことになります。
行政の指導はあるの?
このような考え方から、一日あたり4時間×20日=80時間/月の状態が続くようであれば要注意、100時間/月を超えたら危険と扱われており、産業医の面談を行うよう、法律でも定められています。
部下もしくは自分の体を守るためには
疲労がたまってくるとまずその表情に変化が現れると言われます。
疲れた表情をしている、呼びかけても挨拶がかえってこない、などこれまでと変化が
感じられる場合は注意をし、産業医や主治医の意見を求めたり、会社と業務について
相談したりするようにしていただきたいと思います。
実際の現場では
人事や総務の担当者がたまに職場に行く程度ではなかなか変化に気づくことは難しいと思われます。同僚や先輩、上司部下の日々の関係のなかで、忙しそうならフォローする、疲れていたら声をかける、などが自然にできるのが一番の予防法なのではないでしょうか。
健康には食事、睡眠、運動が必要と言われます。働いている人のうちその3つを十分に満たせている人は数%しかいない、というデータもあるようですが、できるだけバランスよく確保するようにしたいものです。自分も含めてですが。
なお、この内容は起こり得る事例を想定し、一勤務社労士の知識と経験に基づいて
一般的な解説をお伝えしています。
実際の個々の事例においては様々な要因を考慮する必要もございます。
必ず上司の方や人事部・総務部、労働組合の方などとご相談やご確認のうえ、慎重なご対応をしていただくことをお勧めいたします。