19「背中でみせろ」
それから毎日が激しくなった。リーダーは班長の手であり足であり耳として、現場で変化があればすぐに報告をいれなければならない。少しでも遅れるとものすごく怒られた。
また、班長は、上がしっかりすれば下も必ずついてくる、という考え方だったので、何かあればまずリーダーである自分が怒られたし、見本となることを求められた。
今でもよく覚えている言葉に
まずお前が汗をかけ
というのがある。自分が率先してやれば、ぜったい下の人間はついてくる、というのだ。
まずお前が汗かかなくてどうすんだよ、おまえが背中で引っ張ってかなくてどうすんだよ
とよく言われた。
塗装の職場での仕事も慣れてきてすこし楽を覚えてきたころだったのに、毎日その調子なので楽をするどころか、もうへとへとだった。
ただ、初めは背中で引っ張るってなんだそりゃ、くらいにしか思ってなかったのだが、
リーダーが汗をかいて文字通り走り回り、それでもリーダーだけ怒鳴られ怒られている姿を見て、みんなもさすがに申し訳ないと思ったのか、少しづつピリッとしてきた。
そのうち、
おれも手伝いますよ
などと手助けしてくれるメンバーも現れて、徐々に高梨イズムが浸透していった。